魔法の唱え方

2週間ほど前のことかな。
いや、それよりも前だっけな。
夏休み入ってからのことで
ファミレスでなんとなしの会話を
三人でしていた時のこと。

その中の一人が手で髪を
溶かすような仕草をして
一本髪が抜けたことから
その話題が始まって。


曰く、自分の髪の毛を一本
それを五円玉の穴に通しす。

その通した髪の毛の両端を片手で摘まんで
五円玉を吊るすような形で持つ。

そして、ある回数分だけ上下に振って
その後は五円玉の様子を伺う。

これで、一番大きく円を描く用に五円玉が
反応したその回数分を年齢として
結婚する年齢が判断出来るという
なんだかコックリさんちっくな話しだ。

例えば、20歳を占いたいなら20回振る。
30歳を占いたいなら30回。
と、占いたい年齢ごとに分けて回数を決める。

20歳を占ったあとに+10回振って30歳。
なんてことは出来ない。
……決まりらしい。

しかし、こういった話は
いったいどこから来るんだろう。

一見なんの根拠もないように思えるのだが
そちら方面の方には
星の動きナンチャラで導き出した方法だったりするのかな。
なんて、考えてしまうのは
理系男子の性か。

しかし、理系男子と言えど
ロマンチックな心失ったつもりはない。
元より、理系男子にロマンチックがない
なんて言う文言はおかしな話で
理系にこそロマンが……まぁいいや。
一般的には占いとかは
これでも信じるタイプなもんで。
良い結果だけは。
それとラッキーナンチャラの類は
絶対信じないけど。

その話を切り出した友人は
どうやら20~40あたりを
試したのだが、全く反応しないとのこと。

試しに、その友人の隣席に
座っていた友人がやってみる。

妥当な数字であると思う
20代後半から30代を
順当にやっていく。

すると、27回の時
他の回数では全く反応しなかったそれが
なにか引っ張られているかのように
円を描き始めた。

この時点では
私もまだ苦笑の域だった。

小さい頃、姉貴に
コックリさんで半泣き状態に追いやられた
忌々しい記憶がある。
霊的な存在が働くのかは別として
その時、見事に三匹の動物と一体化したのは
家の姉貴だった。

これもまたそれの類ではないかと勘繰る。

でも、自分でやってみないことには
始まらない。

現に上手く行っていない方が
目の前にいるんだ。

場を白けさせるとはいかないが
2対1の構造で批難でもしてやろうかと
思って試してみた。
が、かえって場が盛り上がってしまった。

25回の時、円を描いたのだ。
しかも、先ほどとは比べものにならない位の
スピードと大きさで。

思わず、皆吹き出した。

一番信じていなさそうな
この私がやらかしたのだから。

その円の描き方にも驚いたが
その結婚するという年齢とやらにも驚いた。

25歳。

25歳って。
てっきり魔法使いにでも
なるかと思っていたのに。
夫になっているとは。

しかも、前の友人二人して
絶対できちゃった結婚だとぬかしやがる。

それは、意外と早かった
年齢に対するリアクションなのか
それとも、私という人間を観て評価しているのか。
後者だったら、舐めるなよ
私の臆病な貞操観念を。

いや、問題はそこじゃないんだ。
心の準備ってものがある。
いきなり25歳に結婚するぞ
と言われましても。

と、なんとなしに鵜呑みにしてしまった。

しかし、同じ回数を何回も試していく自分と
それを友人がやっているのを見ていると
違和感を覚える。

おそらくこれは伝えない方がいいこと。
それこそ本当に場が白けてしまう。

けれど、初めは本当に驚いたのだ。
何も意識はしていなかった。
試しに、髪の毛を入れ替えてやっても
全く反応せず、自分のでなければいけないと
結論づけたりもした。

推察できるものでもないし
そんなに深く考えるものでもない。
こういうのは
何も考えずに楽しむものだ。

お会計時、財布を見てふと
「50円玉じゃだめなのかね。」
と言ってみた。

そのあとは解散だったので
家でやってメールしてね
という話になった。

家に帰って
無心で50円玉を振ってみる。
24回。25回。26回。

見事、25回の時だけ
それは円を描いた。

ただ、やっぱり50円玉では
ご縁がないのか
その描く円は弱々しい。

というか……

そういえば、メールも送らずじまい。

やっぱりこういうものは
深く考えるもんじゃないな。