さらい雨と柊(下書き)
雨は好き。
どこまでも続いて、いつまでも突き抜けるような青空と違って
灰色の雲が覆い、さらにはその雲から雫が落ちて
まるで天井を作り出すような感じがするから。
そうすればこの地球という世界に閉じ込められたというような気になって
同時に貴方がどこかに行ったとしても、有限である世界の中では
必ずどこかにいるはずだと思わせてくれる。
でも、雨期は嫌い。
永遠にその囲いが続くような気配をさせておきながら
その長い長い雨期が終わったと思えば、いつの間にか
その前に存在していた季節をさらっていくから。
春の末に梅雨、夏の花に嵐、秋の留まる前線。
それらを迎えればさらって行ってしまうのだと。
3度目の雨期を迎えたころには覚悟をしていた。
もう、冬が来てしまうと。
時雨がそれを知らせてくれる。
前線が私を追い越し、貴方までを追い越そうとしている間に。
その時に私は思いついてしまった。
時雨が降らす雨と雪が代わる代わる中。
全てを雪に変えてしまおう。
そうやって私の中に潜む、冷たさを全てさらし
雪を積もらせて、あの雨雲が作る天井よりも
どこにも行けないようにする包囲を作ろう。
何処かに行こうとしたって
作り出した雪の結晶はトゲトゲしく、貴方の体温を奪っては
冷たくなった体はきっとヒリヒリしていくのでしょうね。
そうやって疼ぐ痛みを私を失う悲しみと勘違いして
すぐに戻ってきてくれるでしょう。